2023年6月の理事会でACC21のミッション(果たすべき使命)として「ACC21は、プロフェッショナルな“コーディネーター集団”として、様々なリソース(資金、ひと、知識・情報など)を橋渡しすることで、社会課題に主体的に取り組み、問題を解決できるよう貢献します。」が採択されました。このミッション策定にあたっては、22年度に設置された「ACC21中長期計画」委員会のもとで準備作業を進めていた事務局長と広報担当者が中心となりスタッフ間で協議し、委員会に提案され、理事会の採択に至ったものです。
このミッションの内容を改めて読んで、筆者には感慨深いものがあります。ひとつは、2005年のACC21の創設時に準備委員たちの力を借りながら筆者自身がまとめたミッションの考え方や価値観を引き継ぐものであったことです。組織活動で世代が交代するとき、若い世代は必ずしも先人たちの考えや手法を引き継ぐとは限りません。因みに、創設時に掲げたACC21のミッションは、アジアに次の4つの“流れ”を推進し社会変革を興すこと。(1)“資金”の流れ、(2)“ひと”の流れ、(3)“知識・情報”の流れ、(4)“政策・制度変革”の流れ。そしてこれらの流れを作る“人づくり”を行うことをミッションに加えたものでした。
新しいミッションは、事務局長とスタッフたちの発案を基に採択されたACC21の新ビジョン「人々が温かいつながりのなかで共に生きる、多様な“コミュニティ”に彩られた世界の実現」を主体的にさらに進めようという気概を感じさせます。
一方、これまでの40年間にわたるNGO活動の経験者として、筆者があえてコメントすれば、克服しなければならない課題があります。それは、「プロフェッショナルな“コーディネーター集団”」としての自らの位置づけです。プロフェッショナルなとは何か、コーディネートするとは何か。
プロフェッショナルなとは、筆者の勝手な解釈ですが、以下の内容を含むものと思います。(1)仕事が正確、(2)早い、(3)受益者(顧客)と寄付者(投資家)両者を満足させる成果を出す。NGOもビジネスも、プロとしての営みは同じと考えます。NGOは、ときにはボランティア団体として考える人がいますが、相互に助け合うぬくもりある社会を作るためにボランティア活動(無報酬の活動)は大切です。しかし、給与をもらってNGO活動をする限り(例え薄給でも)、プロ意識を持って仕事に取り組むことは必須です。筆者は以前より、NGO活動は社会変革を興す投資活動(知見、ノウハウ、時間、ネットワーク等を使う投資活動)と捉えていました。他者からの寄付金を受け(預かり)、助成金を受け、行政機関から補助金を受けて活動するには成果を生み出す責任があります。
コーディネートするとは何か。筆者は、次のように考えます。立てた目標を達成するために立場や考えや技能が異なる人々や組織の参加を得て、その関係を調整し、協働のための道筋をつくっていくこと。筆者自身の経験から、その役割を果たすコーディネーター集団(人、組織等)には、以下の条件が求められます。(1)達成したい目標をしっかり持つ(換言すれば、事業の受益者、例えば貧困で路上生活を余儀なくする人々や子どもたちの実態・問題点をよく知る、(2)目標達成に必要な幅広い知見を持つ人材や組織、そして資金提供者(リソース)を知り(必要に応じてNGO界を超え)、“ネットワーク”推進者として働き、それら関係者・組織等との信頼関係をつくる、(3)ネットワークに参加してくれる個人や組織の意見等に謙虚に耳を傾ける(参加者が主体的に関与してくれるようにプロモーターあるいはフォロワーとしての役割)、 (4)事業を推進する事務局体制を整える。
ACC21の次世代が立てたミッションが遂行され、ビジョンの実現に一歩でも近づくことを切に期待しています。
(代表理事 伊藤 道雄)